桜蔭塾 第5回講座
9月11日(土)
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三浦 徹先生 イスラーム世界は何を語るか ~日本との交流~


♦日時
2021年9月11日 14:00 JST
zoom
♦テーマ
イスラーム世界は何を語るか
~日本との交流~
♦申し込み期間: 8月1日(日)~9月4日(土)
♦三浦徹先生からのメッセージ
イスラーム世界はアジア・アフリカから欧米までグローバルに拡大し、日々のニュースにも登場します。他方で「複雑でわかりにくい」という声を聞きます。しかしその教義は単純明快で、明治の元勲伊藤博文は「わからないことはなにもない」と語ったといいます。高校・大学で実施したアンケートから、日本のイスラーム認識の謎を探り、江戸から明治・大正・昭和・平成と日本とイスラーム世界の交流をたどることによって、両者に共通する問題を理解していきます。
♦プロフィール
略歴:
東京大学教養学部教養学科卒業(ドイツの社会と文化) 1975年
(株)平凡社編集部勤務 1975-84年 『別冊太陽』『イスラム事典』『オリエンタリズム』などの編集を担当
東京大学大学院人文科学研究科東洋史学専修課程 1984-87年
お茶の水女子大学文教育学部教員(比較歴史学・グローバル文化学環)1990―2017年
お茶の水女子大学理事・副学長(教育担当) 2007-08、2017-2020年
同 国際交流室長、文教育学部長、人文科学系長、附属図書館長などを歴任。
アラブ・イスラーム史を専門とし、都市研究から、中東・イスラーム社会全体の分析と理解を進める。
お茶の水女子大学では、史学科(1996年より人文科学科比較歴史学コース)およびグローバル文化学環(2005年から)において授業および論文指導を担当(グローバル・ヒストリー、アジア史研究法、地域研究方法論、イスラム社会文化論、宗教文化とジェンダーなどの授業科目を担当)。放送大学客員教授として「イスラーム世界の歴史的展開」を担当(2011-16、アーカイブズ版が現在も放映中)。
主な著書
1. 羽田正・三浦徹編『イスラム都市研究:歴史と展望』東京大学出版会,1991年,363p. 同増補・英語版 Islamic Urban Studies: Historical Review and Perspectives, London: Keagan Paul, 1994.
2.三浦徹・東長靖・黒木英充編『イスラーム研究ハンドブック』栄光教育文化研究所,1995年,484p.
3.『イスラームの都市世界』(世界史リブレット16)山川出版社,1997年,90p..
4. 日本イスラム協会監修,佐藤次高・三浦徹他編『新イスラム事典』,平凡社,2002年,657 p.
5. ジェネット・L・アブー=ルゴド(佐藤次高・斯波義信・高山博との共訳)『ヨーロッパ覇権以前:もうひとつの世界システム』岩波書店,2001年,上264+23p.,下200+91p.
6.( 編集委員)『新選世界史B』東京書籍,2002年~現在 .
7. 三浦徹・岸本美緒・関本照夫編『比較史のアジア:所有・契約・市場・公正』(イスラーム地域研究叢書4),東京大学出版会, 2004年,310p.
8.歴史学研究会編『世界史史料2:南アジア・イスラーム世界・アフリカ18 世紀まで』(編集委員小谷汪之・富永智津子・三浦徹),岩波書店, 2009年,390+13p.
9. 編著『イスラーム世界の歴史的展開』(放送大学教材)放送大学教育振興会, 2011年,243p.
10. 小林誠・熊谷圭知・三浦徹編『グローバル文化学:文化を越えた協働』法律文化社, 2011年,206p.
11. 編著『イスラームを学ぶ:史資料と検索法』(イスラームを知る)山川出版社, 2013年,125p.
12. Toru Miura, Dynamism in the Urban Society of Damascus:The Ṣāliḥiyya Quarter from the Twelfth to the Twentieth Centuries, Leiden: Brill, 2016, 347p.
13. 編著『750 年:普遍世界の鼎立』(歴史の転換期3)山川出版社、2020年、228p.
14. I・M・ラピダス(三浦徹・太田啓子訳)『イスラームの都市社会:中世の社会ネットワーク』岩波書店, 2021年5 月,xviii+322p.
♦卒業生の声
「ホワイトボードに書かれた右上がりの文字とふぞろいの図形。
ゼミで議論が混迷した時、三浦先生がやおら立ち上がって、ホワイトボードに先生特有の右上がり30度の文字でささっと要点を書き出し、それを端的かつ華麗に解説しながら図形を書き足していくうちに、気づけば皆のモヤモヤがふーっと解決。三浦ゼミといえば、この光景が真っ先に思い起こされます。
社会人になった今、私自身も、会社のブレストや打ち合わせで、話の要点をすぐにフリーハンドの図で書き連ねるクセがあり、これは三浦先生から伝授されたスキルかもしれません。
私の場合は周りの役に立っているかは定かではありませんが、考える→誰かと話す→書き出すという、一連のアウトプット作業で思考が整理されていく実感を三浦ゼミで得たように感じています。」
(比較歴史学 2002年卒、『お茶の水史学』第64号掲載)
「三浦先生はかなたに生きるひとの息づかいを運んでくる人だった。布で顔を覆った、なにか不穏な印象の、かなたのひと。道を歩き、食事をし、祈る写真を見た。営む日常も抱える感情もそう遠くはないだろうと思える。そのとき、もはやその地は異国でなくなっている。無知の不安が好奇心へと変わる。学問の扉が開いた。
淡々とした語り口は、革新的なことを、さもあたりまえのように感じさせる。むずかしいことも易しいと錯覚させる。トランスジェンダー学生の受け入れを決めたときも、先生はテレビ画面の中にいて、やはり「ふつうのこと」のように話していた。そのふつうにどれだけ背中をおされた人がいただろう。
先生と会話すると、膨大な知識の海にボートで浮かんでいる気分になる。それはとても心地よい感覚だ。どんなに荒っぽい球を投げても返してくれる。じたばたともがく勇気をもらう。」
(グローバル文化学環、2013年卒、『グローバル文化学』第13号掲載)