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桜蔭塾 第15回講座報告

同志社大学 学長 

植木 朝子 先生

『梁塵秘抄』の世界 ~平安時代の流行歌

   第15回講演では、同志社大学学長の植木朝子先生(H2国文学科卒)をお迎えして、『梁塵秘抄』の世界を案内していただきました。

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 植木先生は、学部以来、中世歌謡の世界に魅かれて研究を続けていらっしゃいます。今回取り上げられた『梁塵秘抄』は、平安時代末に流行した「今様」の詞章を集めたものです。文学史の上ではあまり大きく取り上げられることはないものの、神仏への真摯な祈りや大胆な性愛、子を思う深い親心や鋭い社会風刺さらには動物や虫への親近感など、実に幅広いものがテーマになっています。それらの中からいくつかの歌を取り上げていただきました。

 例えば、綾藺笠(いぐさを綾織りに編み裏に布を張った笠)を主題にした歌は、武士の忠誠心を謳った説や、若い男女のデートのシーンという説など、いくつもの解釈ができる奥深いものとのこと。歌の解釈自体が想像の羽を広げることができる豊かな世界とのことに、深く興味を惹かれました。

 また、今様の中には楽譜が残っているものがあり、その中の「蓬莱山」という曲について、現代の雅楽師が楽譜に基づいて復元したものを、先生が美しいお声で実際に歌われたときには、ふと平安末期の世界にタイムトリップしたような不思議な感覚になりました。

 『梁塵秘抄』は840年以上前のものですが、時代を超えて人の想いや感性はそうそう変わらないものだと身近に感じることができ、楽しいひとときとなりました。植木朝子先生、興味深いご講演本当にありがとうございました。

★受講者からの感想★

・今様の楽譜が残っており、音を再現する試みが行われていることは初めて知りました。実際にうたってくださった際は、今様の雰囲気を感じることができ、大変印象に残りました。また、「歌謡は場所や時間を超えた普遍性がある」という点にも非常に興味を持ちました。

・現代に伝わるわらべ歌の歌詞が 梁塵秘抄の歌詞の解釈につながるというところが大変興味深く感じました。先生の今様の調べがとても美しく平安時代にはゆったりと時間が流れていたのだと実感できました。

・今様が非常に幅広い内容を持っていたこと、女性が唄い手であったことなどを知り、また、絵巻もの鳥獣戯画なども一緒に紹介していただき、なんとなく知っていた今様が、輪郭を持って知ることができました。

・今様の楽譜で、「蓬莱山」を謡っていただき、今様の雰囲気が分かりました。「遊びをせんとや生まれけむ・・」は遊女の歌だと思っていましたが、大人一般主体説が主流ということで、認識を新たにしました。

・平安時代の文化として和歌があるが、庶民は喜びや悲しみや教えなど自分たち仲間の中で色々に口ずさんでいたのだろうと想像すると楽しい。

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・植木先生の謡われた哀切な今様が印象に残っています。

・今様という(私にとっては)なじみのないものが、童謡やはやり歌と関係づけられて身近に感じられました。歌ってくださったことが特に印象に残りました。他にも、鼬のお話、わらべ歌との関わりなどが面白かったです。

・1つ1つ丁寧に歌を紹介してくださりその解釈についてもいろいろな例を示していただき大変興味深く拝聴いたしました。先生の説明がとても分かりやすくありがたかったです。

・今様は、小説で歌う描写があったことをきっかけに調べたことがありましたが、さまざまな解釈や、時代や地域を超えた普遍性に触れ、興味が広がりました。ありがとうございました。

梁塵秘抄は、ちゃんと読んでみたいと思いながも、なかなかきっかけがないまま、この年になってしまいました。 今回、先生のご本のビギナーズクラシックシリーズというお手軽な(はずの)本を購入して、予習をこころみましたが、なかなか難しくて、読みきれていません。 本日、ご講義をきいて、やっと親しみがもてるようになったので、もう一度読み直してみます。ありがとうございました。

・とても濃い内容でした。 梁塵秘抄とは、文学史で聞いただけのものだったので、今回の講演で詳しく分かりとても興味深かったです。 色々な種類の歌の紹介と、その背景の説明など、とても楽しかったです。 様々な解釈があるのは、想像力がかきたてられます。 植木先生の本を買って、梁塵秘抄のことをもっと詳しく知ろうという気持ちになりました。 どうもありがとうございました。

・優雅な講師の先生で、お声もきれいで、ゆったりとした時間の流れを感じた講演でした。今の時代に必要なものを思い起こされました。お忙しい中を大変ありがとうございました。

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