桜蔭塾 第27回講座報告
お茶の水女子大学コンピテンシー育成開発研究所 教授
髙橋 哲 氏
児童・生徒の問題行動を眺める視点ー非行と自傷行為を例にー
第27回桜蔭塾では、お茶の水女子大学コンピテンシー育成開発研究所教授 髙橋 哲 先生をお迎えし、「児童・生徒の問題行動を眺める視点ー非行と自傷行為を例にー」と題してご講演いただきました。会場とZoomのハイブリット配信で約50名が受講しました。

先生の前職でのご経験をもとに、少年鑑別所での仕事のあれこれや犯罪・非行をめぐる誤解を解くようなお話をしていただきました。
例えば、「非行少年の数は減っているが、凶悪化している。(はい・いいえ)」の問いに、データをもって減っているし凶悪化とも言えないことをお話しくださいました。女性犯罪者の割合、性犯罪者の再犯率、殺人事件の加害者と被害者の面識のあるなし、非行した子供を刑務所ツアーに連れていき再犯防止を図ること、事件を否認している性犯罪者の再犯率などについて、私たちが誤解していると思われることを丁寧に解説してくださいました。
また、非行を眺める視点として、いくつか挙げて頂きました。「行動にはたいていメリットがあるので、それを単に手放せというのではなく、本人なりの解決の試みとみる。」「正論には逃げ場がないので、行動は断固拒否だが、背景にある気持ちには一部の理を認める。」「誰が問題と思っていて、どのくらい困っているのか、問題なのか、解決の試みなのか」など、相手の気持ちを推し量る大切さを感じました。
さらに、自傷行為の理解と支援というテーマで、リストカットだけが自傷行為というわけではなく、先生のつくられたパンフレットにより、自傷行為に関する思いこみがちな事柄を正していただきました。自傷行為によって痛みに対して耐性がつき大きな事件につながらないように、周囲の目が必要だと感じました。
髙橋先生、大変デリケートなお話を、客観的に分かりやすくお話しくださりありがとうございました。
*参加された方で、講演資料のデータ送付をご希望される方は、桜蔭塾までメール(jigyoubu@ouinjuku.com)またはHPのお問い合わせよりご連絡ください。
★受講者からの感想★
・問題行動を眺める視点を様々な観点からデータに基づいて盛りだくさんに説明していただき認識を改める事象も多かったです。
・90分だと聞いたときは長いなと思っていましたが、あっという間に時間が過ぎました。先生の実務経験の話はもっと聞きたかったです。
・小学校で教育サポーターをしているため、問題行動をする児童と接する上で参考になる視点がたくさんありましたし、再犯や自傷行為についての実態を知ることができ、勉強になりました。ありがとうございました。
・具体例などを交えてお話してくださったため、すごくわかりやすかったです。パンフレットも見やすく、自傷行為について考えてみようと思うきっかけにもなりました。
・とても興味深く拝聴させていただきました。 パンフレットは一緒に働く保健師さんや学校の先生方とも共有したいと思います。 ありがとうございました。

・示唆に富むお話をありがとうございました。 知らないことも多くありました。素晴らしい先生のご知見と、優しいお人柄に触れることができ、勉強になりました。今後の生活に生かします。
・自分とは違う世界だと思っていた非行少年少女が,実は同じ世界にいて延長線上なんだなと思いました。
・犯罪の中のお話でも、特に「背中を引く力」について心に残りました。少年少女にとって、何を犯罪する前に考えるのか、踏みとどまった時は何について考えているのかなどを聞くというお話を伺い、ひとりの人間として罪を犯した人に対して丁寧に向き合い、先入観などを持たない大切さなどに気づくことができました。
・学生さんがたくさん聞いてくださっていて頼もしいです。 私たちの年代でも何かできることがあったら積極的に取り組みたいと思いました。 LGBTのかた、障害のある方含めて生きやすい世の中が誰もが生きやすい社会なんですよね。
・私自身更生保護のボランティアに参加していることもあり、自分たちのような、更生に関心のある人間とそうでない方との捉えかたのギャップは感じる部分ではあったので、自傷と非行という限られた面ではありますが、非行神話というものに触れていただけて嬉しかったです。
・思っていたより厳しい現実を知りました。 男女比など統計の取り上げ方で 情報の伝達が変わってきてしまうのも気がつかない点でした。心理の専門家がたくさん子どもや若者に寄り添ってくださっているんですね。
・久しぶりに髙橋先生のご講義を受けさせていただき、学生時代よりも自身の担当ケースや経験を思い浮かべながらお話を聴かせていただくことができ、改めて勉強になりました。また、勤務する中でケースで自傷行為について扱うこともあり、保護者に対する伝え方に迷った時にパンフレット『自分を傷つけるのはなぜ』を拝読させていただき面接に活用させていただいています。ありがとうございました。
・非行とは誰もが関心のあることだからこそ、周りの理解度がとても重要になる、というのは確かで、しかしそれぞれに信念があるからこそ、変わっていくことを求めるのも難しいのだなと、今回の講演や質疑応答を踏まえて考えるきっかけをいただきました。 本日は誠にありがとうございました。